カテーテルアブレーション(カテーテルによる心筋焼灼術)
カテーテルアブレーションは不整脈の治療法のひとつです。
X線透視下に心臓内にカテーテルを進め、不整脈回路の一部である心筋をカテーテル先端から高周波により焼灼(電気メスと同じ原理)し、不整脈の回路を遮断する方法です。
アブレーションの対象となる不整脈
1.発作性上室性頻拍(PSVT)
房室結節と異常伝導路との間に電気回路を形成することによって起こる頻脈性不整脈。
以下の2つがこの頻拍の大部分でアブレーションの最も有効な不整脈です。
1)房室回帰性頻拍(AVRT、WPW症候群) 房室結節以外に心房と心室を結ぶ副伝導路が存在し、心房からの興奮が正常伝導路をバイパスして早期に心室に伝わるため早期興奮症候群とも呼ばれます。
一度心室へ伝わった電気信号が再び心房に戻ってしまい、心房と心室の間に電気回路が形成され頻脈性不整脈が発生します。
2)房室結節回帰性頻拍(AVNRT) 房室結節の内部に二重の伝導路が存在し、電気回路が形成され頻脈性不整脈が発生します。
2.心房頻拍
心房の一部に異常自動能を有する部分が存在するために頻脈性不整脈が発生します。
アブレーションで異常な興奮部位を焼灼することにより根治の可能性が高くなります。
3.心房粗動
心房の筋肉が1分間に250~400回も規則正しく収縮する状態の不整脈です。
多くの場合、右心房の三尖弁の周囲を電気信号が旋回し続ける異常な電気活動によるものです。
アブレーションで電気回路の一部を途絶することにより治療をします。
4.心房細動
心房が痙攣したように不規則に収縮する状態の不整脈です。
心房細動が長時間続くと、心房の中で血液のよどみができ血栓が形成され、それが他の臓器の動脈を塞いで血栓塞栓症となります。
たとえば、脳梗塞です。以前は薬物療法でのコントロールが中心でしたが、近年、原因となる部位が特定されるようになりアブレーションによる治療も行われるようになってきています。
5.心室頻拍
心室は心臓から血液を身体全体の送り出すポンプの働きをしています。
頻拍の状態が長時間続く場合(特に心機能が低下している場合)には、失神や突然死に至る危険な不整脈の1つです。
原因となる別の病気がはっきりしない特発性心室頻拍と心筋梗塞、心筋症などの器質的心疾患に伴う二次性心室頻拍に分けられます。
頻脈の原因となる電気回路や異常自動能を有する部位が同定できればアブレーションによる根治の可能性は高くなります。
不整脈の種類によって成功率と再発率は異なります。
WPW症候群や発作性上室性頻拍症は95%程度の初期成功率で、再発率も2~3%程度です。
心房粗動は典型的心房粗動では90%以上の成功率が期待されますが、非典型的心房粗動では成功率は低くなります。
心房細動は発作性では初回成功率は80%程度ですが、2回目以降は90%以上の成功率が期待できるようになってきています。
持続性、慢性心房細動では成功率は下がります。
また、心室頻拍症は基礎心疾患に合併したものが大部分で、カテーテルアブレーションの適応になるものは一部に過ぎません。
当院では難しい症例に対しては、EnsiteシステムやCARTOシステムなどの3Dマッピングシステムを使用し積極的に治療を行っています。
カテーテルアブレーションの利点と欠点を充分理解して、治療法を選択していただきたいと思います。
以下に利点と欠点を示します。
1.カテーテルアブレーションの利点
1)根治療法であること:カテーテルアブレーションは上に挙げた不整脈の場合、成功率は高く、再発率も低いことが挙げられます。
大部分の症例でカテーテルアブレーションに成功するとその不整脈に関しては薬物療法の継続や、病院への通院の継続も不要になります。
2)薬物療法の場合、根治療法ではないので、不整脈発作が何時起こるかといつも不安を抱えていなくてはなりません。また、薬物療法を継続するための医療費や時間も馬鹿になりません。
2.カテーテルアブレーションの欠点
1)成功率が100%ではありません。また、再発もあります。症例によって異なります。
2)あらゆる不整脈を治せるわけではありません。
2種類の不整脈が合併していることはよくあることですが、カテーテルアブレーションの後も残りの1種類の不整脈が残存する場合もあります。
3)合併症の危険性が皆無ではありません。
頻度は決して多いものではありませんが、重大な合併症の可能性があります。
アブレーションの方法
| 図: | CARTOシステム使用による 心房細動のカテーテルアブレーション |
アブレーションは、不整脈の原因となる心筋の部位を高周波により組織温度を上昇させて焼灼する根治療法です。
異常な興奮を起こす病変部位や電気回路を断ち切る部位を標的にします。
不整脈のメカニズムを診断し、アブレーションを行う至適部位を探す作業をマッピングといいます。
アブレーション用のカテーテルの先端の電極で心内心電図を観察しながらマッピングを行い、心内心電図のパターンと透視上の解剖学的部位からカテーテル先端が至適部位に当たっていることを判断し高周波通電を行います。
アブレーションは局所麻酔で可能です。
カテーテルの挿入は標準的には大腿静脈、内頸静脈より行い、症例によって(左心系に病変がある場合)大腿動脈を追加します。
一部の不整脈の治療において、アブレーションに際して右心房と左心房の間にある壁(心房中隔)に先端に針の付いた特殊なカテーテルで孔を空けてカテーテルを右心房側から左心房に通して治療をすることがあります。
アブレーションの成功は不整脈が再現されないことで確認します。
その成功率は不整脈の種類によって異なります。
入院期間は数日から1週間程度です。
手術中の合併症には、稀ですが、手術死亡/感染/出血/血腫/気胸/穿孔/心タンポナーデ/完全房室ブロック/血栓塞栓症/手術後心不全/大動脈解離/左房食道逖鬆/食道迷走神経障害/横隔神経麻痺などが報告されています。
しかし、死に至るような重大な合併症は極めてまれです。



